COIとは
“conflict of interest”
利益相反の意味です
簡単に説明すると、
発表する立場の人の利益と
その治療を受ける患者さんの利益が
対立する可能性があることを示すということです
発表する側の立場の人が
企業から支援や協力を受けている場合に
科学的な根拠よりもその企業の利益を優先する結果になった場合
患者さんは不利益を被る可能性がありますね
この背景を発表の前に開示する必要があるということは
真っ当な考え方ではありますが
中身をしっかり理解する必要があります
外科学会でのCOIの分類
- 企業や営利を目的とした団体の役員,顧問職等の兼業
- 株の保有
- 企業や営利を目的とした団体からの特許権使用料
- 企業や営利を目的とした団体から,会議の出席(発表)に対し,研究者を拘束した時間・労力
に対して支払われた日当(講演料など) - 企業や営利を目的とした団体がパンフレットなどの執筆に対して支払った原稿料
- 企業や営利を目的とした団体が提供する研究費
- 企業や営利を目的とした団体が提供する奨学(奨励)寄附金
- 企業や営利を目的とした団体が提供する寄付講座
- その他の報酬(研究とは直接無関係な,旅行,贈答品など)
詳しくは以下のページに記載されています
https://www.jssoc.or.jp/journal/guideline/info20200617-01.pdf
ほとんどが企業から報酬を受け取ったり
多額の研究費を受け取った場合であり
その金額は上記のページに記載されているとおりです
COIは決して悪いことではなく
あくまで発表時に開示の義務があるということになります
この中でも個人で知らぬ間に
COIに関わっている可能性があるのは
2.の株の保有ではないでしょうか
株の保有に関するCOI
医療に日頃から携わっているので
身近に感じられる企業の株を保有する人も
少なくないでしょう
それ自体はインサイダーでもなければ
全く問題ありません
ただ、
発表により株価を大きく変動させる可能性がある場合は
やはり問題視されることになります
学会が記載しているCOI開示義務は以下の通りになります
- 1つの企業についての1年間の株による利益(配当、売却益の総和)が100万円以上の場合
- あるいは当該全株式の5%以上を所有する場合
具体的な金額を考えると
高配当で有名な武田薬品工業で180円/株の配当なので
約5500株以上
株価が3800円/株とすると
時価総額2000万円以上保有していることになります
株価が3700円から4300円まで変動した時期に
売買をしたとすると
1700株保有していれば100万円の利益が出るので
約630万円分の取引になる計算です
ちなみに株主資本は5兆円なので
その5%を保有というのは考えにくいでしょう
そう考えるとよほどの資産家でない限り
COIとは無縁と考えられますね
指針に違反した場合
外科学会では以下のように示されています
- 日本外科学会が開催するすべての集会での発表の禁止
- 日本外科学会の刊行物への論文掲載の禁止
- 日本外科学会の学術集会の会頭・次期会頭・次々期会頭就任の禁止
- 日本外科学会の理事会,委員会,作業部会への参加の禁止
- 日本外科学会の代議員の除名,あるいは代議員になることの禁止
- 日本外科学会会員の除名,あるいは会員になることの禁止
事実上は外科専門医の剥奪ということになります
学会としては可能な限り厳しい処置ということになります
一方で外科専門医を取得しても
給料が増えるわけでもなく
取得しなくても普通に手術をすることができる
今の日本の制度でこの処遇を開示したところで
どのような意味があるのかは人それぞれだと思います
まとめ
科学者としての医師の立場を示すために
COIの開示は必要です
しっかりと内容を把握した上で
トラブルに巻き込まれないように心がけましょう
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