Leriche症候群を合併するASの手術選択

手術関連
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Leriche症候群について

Leriche症候群
終末大動脈閉塞症ともいわれ、
腎動脈下の大動脈が閉塞している病態です

下半身の血流は
大動脈から供給されないため、
鎖骨下動脈から分岐する
左右の内胸動脈などの
側副血行路によって維持されています 

その原因
血管炎、動脈硬化、塞栓症、内膜剥離、大動脈瘤など
多岐に及びます

Leriche症候群により
下肢虚血の症状が明らかであれば
手術適応となりますが、
症状がなければ保存的に経過をみます

動脈硬化が原因である場合、
その動脈硬化は全身の血管に及ぶことが多いため
大動脈弁狭窄症(AS)を合併することがあります

Lerche症候群を合併したASに対して
アプローチを検討しました。

SAVRかTAVRか

ASに対する術式の選択としては、

・Surgical AVR(SAVR)
・Transcatheter AVR(TAVR)

の二つが選択肢になりますが、
一般的にはTAVRはトラブルシューティングが大変なので
SAVRに耐えられないと判断された症例で行われています

Leriche症候群の症例では
どのようなことを考えて
術式を選択するべきか検討しました。

SAVRのアプローチを考える

SAVRで問題となるのは

・手術に耐えられるか
・上行大動脈の性状が悪くないか

の二つです。

全身血管病であれば
上行大動脈に石灰化や粥状硬化をきたすことがあり
クランプ、送血、切開の
アプローチに制限が出てきます

症例によっては
上行大動脈以外から
体外循環を確立して
低体温循環停止にする必要もあります

TAVRのアプローチを考える

TAVRは比較的低侵襲な手術で
SAVRに耐えられない場合に選択されます。

アプローチの方法は

・TF : trans femoral
・TA : trans apical
・TS : trans subclavian
・DA : direct aorta

の4つが一般的です。

Leriche症候群では
終末大動脈が閉塞しているので
TFは不可能です

TATS
アプローチによって
下肢の血液の供給源となっている
内胸動脈を損傷してしまうリスクがあります

DAでは
SAVRと同様に
上行大動脈の性状が良いところで
アプローチする必要があります

もしもの時にMCSが使えない

もう一点把握しておかなければならないことは、
大腿動脈からアプローチする
Mechanical Circulatory Support(MCS)が
使用できないことです

具体的には
IABPperipheral ECMOなどです

鎖骨下動脈を傷つけない観点から
インペラも使用したくないでしょう

つまり、
心原性ショックに陥った場合に
使用できるMCSが
central ECMOしかないということになります

どのような選択肢がいいのか

これまでに述べてきた通り
どの選択肢を取っても
リスクがあります

シンプルなのは

・手術に耐えられるならSAVR
・耐えられないならTAVR(DA)

となりますが、
それも難しい場合、
例えば

・上行大動脈の石灰化の範囲が広い
・透析患者など胸骨正中石灰を避けたい

などの理由であれば
事前にAxillo-Femoral bypassをしておいて
TAVR(TA)
というのも選択肢になるかと思います

まとめ

今回はLerche症候群を合併した
大動脈弁狭窄症に対するアプローチを検討しました

病態の正確な把握と準備が必要だと考えたため
情報を共有しました

日頃の診療のお役に立てていただければ
幸いです

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