謎の痙攣、PRESって?

手術関連

心臓大血管術後の痙攣
それほど珍しくないので
驚くことはありませんが
先日遭遇した頭を悩ませる症状について
勉強になったことを共有します

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術後の痙攣

心臓大血管手術後
鎮静状態から覚醒すると
時々痙攣をきたすことがあります

特に低体温循環停止を伴う
大血管手術やCTEPHの手術で
痙攣が起こることが多い印象がありますが
多くの原因は微小の空気塞栓であり
後遺症をきたすことなく
経過することになります

今回は私がこれまでに
数例だけ経験した
PRESという病態について
少し文献を用いながら解説します

患者の示す症状

私が術後痙攣を経験した患者の一人は
心臓手術を受けた方で
もともと心因性痙攣の診断があり
ストレスなどで痙攣しやすい傾向にあると
術前から言われていました

簡単な処置をする場合でも
上下肢をガクガク動かして
ときどき眼球を上転させる
割と心配になるような症状でした

精神科の診察では
病的な意義はないので治療は不要である
断言されていましたが
現場の不安は強く
医療安全上は放置できない印象がありました

PRESって何?

今回テーマに挙げた
PRESという病態ですが
Posterior reversible encephalopathy syndrome
の略語を指しています

臨床的には

  • 痙攣
  • 意識障害
  • 視野障害

などの症状を認め、
画像上では脳浮腫と考えられる変化が
後部白質を中心に出現します

脳浮腫は
CTでは低吸収域となり
MRIではT1で等〜低信号/T2では高信号を認めます

PRESって放置していいの?

名称の中にreversibleとある通り、
通常は数日から2週間以内
症状は消失します

今回の症例でも
1週間でスッキリ症状がなくなりました

しかし一部は

  • 脳出血
  • 脳梗塞
  • くも膜下出血

などの不可逆的な脳障害に
陥ることがあるようなので
必ずしもreversibleではないので
このネーミングは議論が分かれているそうです

治療に関しては
高血圧に対して降圧したり
痙攣に対して鎮静したり
一般的な対応と同様のようです

病態がちょっとわかりにくい

PRESが起こる原因は

・break through説
→血圧上昇によるBBBの破綻

・vasospasm説
→脳血管攣縮による脳虚血

以上の二つの仮説が議論されていましたが
どちらも関わっているということに
なっているようです

内外の要因によって脳血管内皮細胞が傷害
→血管攣縮による虚悦でさらに傷害
→全身の血管攣縮による血圧上昇でさらに傷害

このように虚血再灌流が関わり合って
助長するようなメカニズムが言われています

また、
後頭部領域に影響が出やすいのは
交感神経系の支配が
椎骨脳底動脈系で弱く
破綻をきたしやすいからだと
考えられています

知っていないと困る

痙攣は症状が派手なので
その予後について
非常に心配になります

専門分野ではない脳のことも
こういう合併症が心臓大血管手術で
起こりうるということは
私たちも知っておかなければなりません

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