基礎研究で学んでいること

研究関連

心臓血管外科という臨床能力の比重が大きい診療科で
基礎医学の大学院に進学する人は
非常に珍しいと思います

私個人の感覚ではありますが
基礎医学では何を学び、
そしてこれからどのように臨床に応用しようと考えているか

記事にしてみました

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基礎医学を専攻した理由

私は心臓血管外科医でありながら
基礎医学の大学院博士課程に進学し、
現在も博士号を取得することを目標に
日々研究を行っています

博士号を取得することを目標としている時点で
私が基礎医学に貢献することよりは
自分のキャリアに箔をつけるため

大学院に進学していることは明確で
本来の大学院の趣旨に応えられていないかもしれませんが
きれいごとなしにこれが本心です

もともと基礎医学の大学院に進学することを希望していたわけではなく、
特にやりたいことが決まっていないまま大学院に進学した私に
医局が斡旋してくれた場所がたまたま基礎医学でした

熱意と情熱をもって基礎医学に進学したわけではない私ですが、
現在は日々新たな発見に小さな喜びを感じながら
前向きに研究と向き合っています

研究生活の一日

研究は活動時間を自分で調節できます

この辺が臨床と異なることで、
患者や周りの協力にあわせて活動するわけではないので
自分のライフスタイルにあわせて日程を組むことができます

私の場合は早朝から実験を始めることが多く
これは周りの研究者が昼前から研究を始めるので
時間をずらすことで実験機材を自由に使えるからです

研究者は基本的に活動時間が遅めの人が多いので
朝が早いことに慣れている外科医の習慣はここで非常に役に立っています

実験のデータが出たら
資料としてまとめて
自分なりの考察をつけて
スタッフとディスカッションします

基礎医学では大学院生とスタッフの間には
小学生と高校生くらいの知識の差があるので
ディスカッションで得られる情報は非常に新鮮で
自分で考えても得られないような発想を与えてくれます

帰る時間も自由です

上司が帰るまで病院にいるといった習慣は
研究室には全くないので
用事があれば昼過ぎに帰ることもできます

次の実験の仕込みをしたり
スタッフや教授と次のディスカッションの日程調整をしたり
研究に関連する論文をあさったりして
気が済んだら帰ります

私は夕食を家族で食べることを重視しているため
いつも夕食時に帰宅できるように
時間を逆算して研究を始めています

こんなことは臨床ではできませんよね

抄読会や研究発表

定期的に研究室全体で集まる
セミナーが開催されており、
担当する研究者が最新の知見に関する論文を紹介したり
自分の研究の進行状況を発表したりしています

抄読会では自分の研究分野の
最新の情報を正確に読み取る力がつくことと同時に
自分がやっていない研究手法(アッセイ)を勉強し
今後の研究に活かすこともあります

研究発表では
普段からディスカッションをしているので
ある程度は筋道を立てて研究しているのですが
長いスパンを振り返ってまとめることで
まだ結論を出すために追加するべき実験
論文にするためにほしいデータを再確認できます

また、
他の研究者から自分の研究についての
質問や評価をもらうことによって
さらに気づきを増やすことができます

基礎研究と臨床研究のちがい

私は臨床研究をしていないので
バイアスが入っているかもしれませんが
一番強く思うのは根拠の多様性だと思います

臨床研究では
データを数値化して有意差を評価することの繰り返しであり
その結論の根拠はp値などの統計値しかないのかなと思います

外科手術での統計値に関しては
一部の先生の意見ではありますが
手技の修練度の違いを無視して
統計的に解析したデータに価値があるのかと
疑問を持たれる方もいます

私もその意見には同意であり
統計値以外に評価の仕様のない研究が
臨床研究なのかなと思います

基礎研究では
例えば

ウエスタンブロッティングではタンパク質の量や発現の有無
顕微鏡では局在の変化
遺伝子検査では異常な遺伝子の部位とその表現型
サンプルの種(ヒト、マウス、ショウジョウバエなど)でどこまで解釈できるのか

自分が明らかにしたことの根拠の多様性があることが
特徴ではないかと思います

基礎医学の先生と接していると
どんなにおおらかな先生でも
結果の解釈に関しては非常に慎重で厳しい印象があります

根拠となるデータを細かくチェックして
過大解釈をしないように
言葉遣いを丁寧に選んでいます

例えば

AとBは結合している
  ではなく
AとBの間には関連性があり直接的、あるいは間接的に結合していることを示唆する

といった感じです

科学は事実を述べるものであり
事実かどうかわからない解釈を
事実であるように述べてはならないということでしょう

どちらかというと思い込みで理解しがちだった私には
最初は非常に息苦しさを感じましたが
とても勉強になりました

基礎医学で学んでいること、これから

私が基礎医学で学んだことをまとめると

・スケジュール管理
・論理的思考
・解析手法

になると思います

スケジュール管理は研究に必須のタスクで
実験に再現性を持たせるためには
正確に時間を決めて実験をしなければなりません

実験する時間を自由に作れるので
他人や組織から決められた時間で働くのではなく
一日のスケジュールを全て自分で作ること
これは意外と経験が少ないことかもしれません

臨床にどのように応用していくかはまだ未定ですが
手術のトレーニングや動画学習など
時間の有効活用をするための時間の確保に役立てたいと思っています

論理的な思考に関しては
データの解釈を慎重に行う習慣をつけておけば
手術や術後管理に関する結果の解釈を
より正確に行うことができるかもしれません

自分の持ち合わせている知識や経験だけで
都合のいいように解釈してしまう
反省が次に活かされません

小さな失敗や後悔を
次に大きな成功へと導くために
より正確な解釈をすることはきっと臨床で役に立つと思っています

解析手法に関しては
これまでにその内容は延べませんでしたが
毎日のように実験データをまとめる作業をしていると
解析ソフトを使ったり、
エクセルで関数を使ったり、
マクロを使ったり、
少しでも楽をしようとしてパソコンの用途の幅を広げることがあります

これも意外と臨床に活きるのではないかと考えており、
学会発表のための資料整理や
サマリーなどの文書を簡略化することに貢献しています

まとめ

基礎研究で得られるものは
意外とたくさんあります

もちろん臨床を続けて
いち早く術者になって
最前線でプレイヤーとして活躍することも
非常に尊いことだと思います

そのようなプレイヤーと一緒に
私のような研究に時間を割いた外科医が
どのように活躍することができるのか

まだまだ模索は続きます

今回は私が今思いついた
基礎医学で学んだことを記載しましたが
今後まだ新しい発見があるかもしれません

周りと違う経験を活かして
少しでも心臓血管外科領域の発展に貢献できる医師になれるように
これからも尽力して参ります

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