研修医に知ってほしい輸血の超基本

ICUレクチャー

心臓血管外科は
手術中または術後の出血により
輸血を使用する機会が比較的に多い診療科です

輸血に関する基本的な知識がないと
思わぬ合併症に遭遇してしまうため
ここで簡潔に整理しましょう

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輸血の超基本

いわゆる輸血として使用する製剤は

照射濃厚赤血球(RCC)
新鮮凍結血漿(FFP)
血小板(PC)

の3つです

輸血で使用される1U(単位)とは、
献血で採取した血液200mlから採取できる成分量です

つまり、
抽出する前の量の単位なので
抽出後の容量は多少ばらつきがあり、
これから記載する容量は
完全に正確ではないことに注意してください

RCC(赤血球)

Red Cell Concentrate

→2Uで約280cc

赤血球の補充であり、
全身への酸素運搬能力を上げて
臓器障害を防ぐ目的で使用する

輸血で期待できるヘモグロビン上昇値は
2Uで ⊿Hb=80/体重(kg)

外傷の場合
出血量が全身血液量の50%までは
RCC+HES(へスパンダーやボルベンなど)で対処できるとされている

FFP(新鮮凍結血漿)

Fresh Frozen Plasma

→2Uで約240cc(4U製剤は約480cc)

凝固因子の補充目的で使用する。

心臓血管外科手術においては
大量ヘパリンの使用や人工心肺の使用により
凝固因子が不活化あるいは消耗しているため
出血傾向に対して頻繁に使用される 

投与前にPT、APTT、ATⅢ、fibrinogen値などを測定し、
必要かどうかを検討する

凍結状態で保存されているため
使用直前に30~37℃で融解し3時間以内に投与される

PC(血小板)

Platelet Concentrate

→10Uで約200cc(2×1011個)

保存期間が短く
高価(8万円ほど)なため
必要性を慎重に検討する

適応の例は以下の通り

①外科手術→5万(人工心肺の周術期管理は3万)
②造血系腫瘍→2万
③MDS→1万
④再生不良性貧血→5千

輸血で期待できる血小板の上昇値は
10Uで⊿plt = 2.0 × 108 / 体重(kg)

保存についてのまとめ

輸血用血液保存条件有効期間
照射濃厚赤血球2 – 6℃21日
血小板濃厚液20 – 24℃採血後4日間
新鮮凍結血漿-20℃以下製造から1年
アルブミン製剤室温製造から2年
凝固因子製剤凍結せず10℃以下製造から2年 

輸血投与時は
最初の15分は3秒に1滴(1ml/min)…60ml/hr
※大人の場合
以後は必要なスピードで投与

輸血後副作用への対応

・気分不良

 ①輸血の中止。ラインはそのまま確保。
 ②ラベルの確認。
 ③採血、採尿をして溶血の有無を確認。
 ④輸液、利尿。
 ⑤ヘパリン(DICの予防)

・アレルギー反応

 ①輸血の中止
 ②ステロイド、抗ヒスタミン薬投与。

TRALI(transfusion related acute lung injury)

 ※輸血後2時間から6時間に多い
 ①呼吸管理
 ②ステロイド投与

TACO(transfusion associated circulatory overload)

 利尿などのvolume管理
 高カリウム血症、低体温症にも注意

救急でみる出血による症状

全身血液量に対する出血量の割合(%)ごとの経過

15%以下 → 立ちくらみ
15~25% → 軽度の頻脈、軽度の血圧低下、四肢冷感
25~40% → 頻脈(100以上)、血圧低下、不安、発汗、蒼白…プレショック
40~50% → 頻脈(120以上)、血圧低下、極度に蒼白、末梢冷感…ショック
50%~ → 意識混濁、呼吸浅迫、無尿、脈が触れにくい

輸血後電解質変化

・低カルシウム血症

抗凝固剤としてクエン酸を使用しているため、カルシウムがキレートされる
全ての保存血液で起こりうる

※カルシウム値が下がると心臓の収縮力が弱くなり、血圧低下の原因となる

・高カリウム血症

RCC 2Uあたり約6mEqKが含まれる。(保存中の溶血)
クエン酸と、溶血により発生した乳酸によるアシドーシス

※K上昇時にはK吸着フィルターを介して輸血する

・低カリウム血症

クエン酸の代謝過程で重炭酸イオンを発生し、アルカローシスとなる
高カリウム血症よりも頻度は多い

まとめ

輸血を当たり前のように使用するので
適正しようとそれにより起こりうるトラブルを
あらかじめ勉強しておきましょう

少しでも多くの研修医の先生方が
自信を持って輸血を使用できるようになっていただくことを期待しています

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